頭が痛いの、と彼女は言った。床の上に倒れたまま動かない。
「風邪?」
ふるふると小さな頭が揺れる。じゃあ何だというのだろう。
とりあえず、さっと部屋を見回す。
「薬は?」
そう首をかしげたとき、彼女の肩がぴくりと動いた。ぼそりと低い呟きが耳に届く。
「……とってくる」
「じゃあ、水持ってくる」
返答があったことにほっとしながら、台所へと向かう。適当なガラスのコップに水を注ぎ、彼女が倒れていたリビングへと戻る。
「どれ、薬……っ」
彼女の手元を覗き込んで、思わず息を飲んだ。
ガラスの砕け散る音。床が水に濡れる。
彼女がそっと手を添えるそれは、彼女の仕事道具。ヒトの命を奪うもの。
一瞬、呼吸の仕方を忘れた。喉が震える。
「……なんで今……それを出した?」
「だって、薬、って言ったから」
表情の無い、蝋人形の様に白い顔。ちらりと覗く赤い舌にぞくりとした。
僕を見上げて、彼女は淡く微笑んだ。
「疲れちゃったの」
「だからって、何で」
低い唸り声のような声が出た。
彼女が愛しげに銃を見つめる。
「私、今までコレでたくさんの人を救ってきたの。だって皆疲れていたのよ。嗚呼私が救ってあげなきゃ、って思ったの。だからこの引き金を引いてあげたの」
彼女は詠うように、異常なほど滑らかに言葉を紡いでいく。
ちらり、とこちらに視線を投げる。そうして彼女は呆然とする僕に向かって小首をかしげた。
「貴方ならわかってくれるよね?」
とろけるような甘い笑顔。
彼女は綺麗に笑った。
I want to end all.
ねえ、もういいでしょう?
「I want to end all.」=「全てを終わらせたい。」
今年初めての更新が、コレです。
ネタ自体は気に入ってるだけど。ちょっと力不足感が否めない。
09/01/09 Thank you.