たとえば骨と、
 私が持って帰ってきたものを見て、彼は驚いたような怒っているような微妙な顔をした。 「あー……」 「ただいま」  何やら唸り声を上げる彼にいつもどおりに挨拶をする。それから彼の前を横切る。数拍遅れて、おかえり、という声が聞こえた。いつもどおり、の声じゃなかった。 「あー、おい」  戸惑ったような呼び声。 「なに?」 「……なに、それ」  不自然に千切れた文章。 「ああ、これ?」  ひらひらと手を振る要領で、手に持っているものを上にあげて見せる。 「多分骨」  さらっと言うと、案の定「ほねぇ!?」と彼は叫んだ。  さて、ここで私は予想した。次に来る言葉は、 「どこで拾ったんだ?」  うん、予想通り。 「秘密って言ったら怒る?」  そして私の答えも用意していたもの。微笑もおまけしておく。  質問に質問で返すな、と彼は怒るだろう。ちらりと彼を窺うと、うつむきがちにガシガシと頭をかいていた。返事に困った時の癖。それに、私はちょっと首を傾げる。 「いや、怒るっていうか……」  あれ、予想外だなあ。彼は無表情に驚きと怒りと困惑を足したような顔で、私を真っ直ぐに見つめた。 「お前、まさか」  さて、ここで再び私は予想する。(ちょっとぐらい予想が外れてたって気にしない)(私は常に先をいく女の子だからね!)  続く言葉は、候補一「人でも殺したのか?」、候補二「腹が空きすぎて兎でも捕って食ったのか?」、候補三「墓でも掘り起こしたのか?」、候補四は、どうしようか、 「何かに巻き込まれてるのか?」 「へっ?」  予想中に言葉が発せられたことと、その言葉が候補に無かったことに驚いて、私は思わず間抜けな声を上げた。  対照的に馬鹿みたいに(いや馬鹿なのは私か)真面目な顔をした彼は、ずかずかと私に近づいてくると、いきなり目の前で止まった。ばふ、と頭を叩くようにして手を乗せられる。(正直ちょっと痛かった)  何よ、と頬を膨らませて見上げると、彼の口がへの字になっていた。(気づかれないように笑った) 「じゃあ何だそれ」 「拾ったのよ」 「それ、何のヤツ?」 「知らないわよ、多分って言ったじゃない」 「それ……」 「それって何、骨ってハッキリ言いなさい」  ぴしゃりと言い放つと、彼は言いにくそうに「骨、」と呟いた後 「あんまり心配かけさせんな」  ぼそっと囁くレベルの声の小ささでそう言った。  骨入って無いじゃん。  ぽかんとした後、最初に思ったのはそれで、そーやっているうちに「あーもう何だよ」とか呟きながら彼が離れていく。 「え、ちょ」  何となく意味が身体に染み込んできて、そしたら何となく頬が緩んできて、 「わかってるって!」  でも気づかれたくなくて、ぱっと腰に抱きついてやった。(だって彼は背が高いから)  嬉しがるかと思ったらこの男、慌ててぐいぐい押してきた。(負けるもんか!)  ていうか何よ、カワイイ彼女が珍しく抱きついてやってるって言うのに、何なの!(いやホントは理由知ってるんだけどね)  彼が引き攣った声で叫んだ。 「おい馬鹿それさっさと離せ!」 「え? 何、それって?」  とぼけてみる。 「っ、骨だよ骨、それ持ったままひっ付くな!」  そっか、骨とかそーいうの苦手だったっけ。(ホントは知ってたよ忘れるわけないでしょ!) 「えーだってー」  ちょっと悪戯心がうずいて、私はとびきりの甘い声で(ちょっと彼がびくっとしてた)(そういえば二人きりの時でもあんまり使わないなあ) 「折角キレーな男の子に貰ったものだし」    きゃ、とかわざとらしく頬を染めながら言ったら、彼は面白いくらい固まった。
彼のカワイイ彼女の場合

贈り物に骨って、それどんな人? 嘘に決まってるでしょ、ウ・ソ! あーもう、私ってば愛されてる! (真っ赤に染まった彼の顔が可愛いなあ、とか思った)
きちんとページレイアウトも作ったのに、なぜか表示されなくてヘコんでますorz 結局いつもと同じレイアウトです。 作品自体は、とにかくラブコメ!ラブコメ!とか思いつつ書きました。   09/08/31 Thank you.