忙しく動き回る音が家の中に響いている。一階はとても騒がしい。
私は二階にある自分の部屋でそれを聞いていた。
「なんか、なあ」
ひとりだけの静かな部屋。居ても立ってもいられなくなって、CDプレイヤーの電源を入れる。テンポの良い音楽が溢れてくる。私はわりに、静かなバラード系よりロックナンバーが好きだ。元気になれる。
ポーン。
可愛い音がして、古風な壁掛け時計から鳩が飛び出してきた。十二時。お昼ご飯の時間だ。いつの間にか、一階は先ほどの騒がしさが嘘みたいに静まり返っていた。
そしてタイミングを計ったように聞こえてきた、トントンと階段を駆け上がる軽快な足音。
パタンと控えめに開けられた部屋のドア。
「おねーちゃん」
小さな声で呼びかけられる。
「うん、今行くよ」
と返すと、ぱあっと笑顔になった。我が弟ながら可愛い。トントンと階段を駆け下りていく音が聞こえる。
「こらこら、ドアぐらいは閉めてってよね」
苦笑いで呟きながら、後ろ手でドアを閉めて部屋を出る。
一階は、静かだ。
トン、と階段を下りる。
その音がいやに家の中で響いた。ドクンと身体の奥が波打つ。
一瞬、さっきのは幻で本当は私独りだけしかいないんじゃないか、と思った。
トン、とまた一歩を踏み出す。
不安が胸の中で広がる。
トントントン、と早足で駆け下りる。途中で転びそうになって、慌てて壁に手をついた。
一息ついて顔を上げて見えたのは、見慣れた廊下。今この目の前の扉を開ければ、居間に行ける。
しんと静まり返った扉の向こう。
開けるのが、ほんの少し怖かった。
だけどその先に何があるのか、私は知っていたから。
ノブに手を掛けてゆっくりと回し、そのまま押す。カチャリと音がした。
「来たよ」
小さく呟いた言葉はけれど、パーンッという大きな音にかき消される。
一拍置いて、私にカラフルな紙ふぶきが大量に降ってきた。
「お誕生日、おめでとうっ」
三人分の声が綺麗に重なる。低いけど優しい お父さんの声、少しハスキーなお母さんの声、ボーイソプラノ並に高い弟の声。
私は顔を上げて、にっこりと笑った。
Thank you
いつでも傍に居てくれる、大切な君たちに。
大分久しぶりな小説更新ですorz
申し訳ない……。
幸せな家族、がテーマだったのですが。
素直に幸せな場面だけ書けないという自分←
08/09/06 Thank you.